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【山都ラボインタビュー】通潤橋劇や井手下りで伝えたい、故郷の魅力と先人への感謝:梅田貴代士さん

山都町の人材育成事業『チャレンジ・応援!山都ラボ』では、山都町をフィールドに自分でプロジェクトを立ち上げて楽しみながら活動する町内外の方を『プロジェクトオーナー』としてサポートしています。

今回の記事では、令和5年度にプロジェクトオーナーとして参加し、その後も山都町で活動を続けている梅田貴代士さんを取材しました。


プロフィール

名前:梅田 貴代士(うめだ きよし)
出身地:山都町
居住地:福岡県筑紫野市
プロジェクト:
小学生による「通潤橋物語劇」の復活

年齢を重ねるにつれて、だんだんと身に染みて分かってくることがあります。故郷の良さというのはその代表格ではないでしょうか。幼い頃には気にも留めなかったことが実は有り難く、貴重であったと後になって気が付かされることは、誰しも経験があることかもしれません。

旧矢部町の島木地区に生まれ育ち、中学までの少年時代をそこで過ごした梅田貴代士さん。その後、自衛官として日本各地での勤務を経験し、定年まで勤め上げた今、思いを寄せるのは故郷・島木であり、山都町でした。

梅田さん
「母が島木地区の出身で、棚田(峰棚田)のあたりが実家です。母のご先祖さんに何かしたいと思って、ここの活動を何かしたいなということで始めました」

そんな思いで、山都ラボのプロジェクトオーナーとして『小学生による「通潤橋物語劇」の復活』に挑戦しました。

峰棚田にて(右上が梅田さん)

▼峰棚田について

峰棚田は、江戸末期に築かれた約450枚にものぼる棚田です。白系大地に水を送るための用水路である嘉永福良井手かえいふくらいでは通潤橋を造った惣庄屋・布田保之助によって手掛けられ、約170年経った今でも峰棚田の水田を潤しています。

子どもたちに地元の魅力を伝えたい

梅田さんが山都ラボでプロジェクトを始めたのは、たまたま目にしたある劇との出会いがきっかけでした。

梅田さん
「福岡県久留米市の金島小学校というところが『とこしま堰物語』の劇をやっているのを知って、通潤橋と同じだとすごく感銘を受けました。これは自分の故郷でもぜひやりたいと強く思ってチャレンジしたのが『通潤橋物語劇』の復活です。矢部の子どもたちに劇をやってもらうことで、もっと地元の魅力をわかって、将来も地元へ貢献してくれるようになればいいなと思いました」

『通潤橋物語劇』は水不足に苦しんでいた白糸大地の人々を救うために奮闘し、通潤橋を作り上げた布田保之助の姿を描いた劇で、以前は地元の子どもたちによって演じられていたことがあったそうです。

梅田さん
「学校や行政の方、過去の『通潤橋物語劇』に詳しい方にも話を聞いたりしました。私の当初のイメージでは、八朔祭の中で劇をやりたいと思っていました。(当時自分が幼かった)50年前の八朔祭の様子で想像をしていたけれど、今は子どもたちも昔より少なくなっているし、出番が多くて引っ張りだこなんですね。八朔祭で劇をやるということは、どうしても難しいということがわかりました」

昨年度1年間の活動の中では実現に結びつけることが容易ではなかったと話す梅田さんですが、それに肩を落とすことなく、次なる構想を練り続けました。

自作のイカダで井手下り! 視点を変え見る先人のすごさ

今年度、梅田さんが始めた新たな取り組みは『嘉永福良井手《かえいふくらいで》用水路下り』です。

梅田さん
「小学校の頃に友達が『これは井手(用水路)から取ってきたんだよ』とアンモナイトの化石を持ってきたことがありました。その時は軽く流していましたが、今思うと、すごいなあと。こんな山の中に海のものがいるなんて信じられないですよね」

そんなことを思い出し、地元で当たり前に生活の中に馴染んでいる嘉永福良井手を改めて知る機会を持ってほしいと、井手を自作のイカダで下るアクティビティを考案しました。

梅田さん
「山都町は昔と比べて便利な町になったのに、人は減っている。なぜ少なくなったのかと。もっと魅力ある町にしたい、魅力を伝えたいと思っています」

そんな熱意から自作のイカダを制作し、夏には実際に嘉永福良井手を試走。さらに地元の方との調整も重ねて、9月1日にイベントを開催しました。1.3kmのコースを45分かけてゆっくりと流れるコースです。

試作5回を繰り返した自作のイカダ
参加者とともに井手へ入ります
この目線で水路を下るのは新鮮!

梅田さん
棚田に水を行き渡らせるように造られている井手のおかげで米が食べられる。勾配を図る技術など、井手を造る技術はすごいんですよ。おかげで滑らかな流れができているんですよね。通潤橋完成の2年前、1852年に島木の井手が完成しています。隧道(トンネル)も当時はつるはしを使ってたくさん掘られています。将来的にはそんな隧道を通って、つるはしの跡や、ろうそくを立てる台が残っているのなんかも見てもらえるコースを考えたいです」

梅田さんが特に井手下りに参加してほしいのは、地元山都町の子どもたちです。身近にある昔の技術の素晴らしさや、それを作ってきた祖先に感謝の気持ちを感じてほしいと願うのは、まさに梅田さん自身がその有り難みを感じているから。様々なものから恩恵を受けて、今自分たちが生かされているという感謝と喜びが、そこにはあります。

来年は7月から9月までの期間、合計6回の井手下りイベントの計画を予定しています。ぜひ先人たちが今に伝える水の流れに身を任せ、その穏やかさと有り難みを体で味わってみてはいかがでしょうか。きっと、見ているだけではわからないあなただけの発見があるかもしれません。

第1回井手下りイベント参加者の皆さま

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企画制作:合同会社ミミスマス
インタビュー/文/写真:中川薫