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【山都ラボインタビュー】 幸せを感じる土台は温かさ。人がつながるマーケット:ホワイトマクファレイン ライアンさん

山都町の人材育成事業『チャレンジ・応援!山都ラボ』では、山都町をフィールドに自分でプロジェクトを立ち上げて楽しみながら活動する町内外の方を『プロジェクトオーナー』としてサポートしています。

今回の記事では、令和4年度からプロジェクトオーナーとして参加し、その後も山都町で活動を続けているホワイトマクファレイン ライアンさんを取材しました。


プロフィール

名前:ホワイトマクファレイン ライアン
出身地:オーストラリア
居住地:山都町
プロジェクト:山都町マーケット

ホワイトマクファレイン ライアンさんはオーストラリア出身。岡山県出身の美樹さんと一緒に、ご夫婦で2021年4月に山都町へ移住しました。まずは、山都町へ辿り着いた経緯をお伺いしました。

ライアンさん
2016年ごろワーキングホリデーで日本に来て、高知県の吉野川でラフティングガイドをしていました。夏場は日本、冬場はオーストラリアに戻ってラフティングの仕事をしていました。

日本が気に入り、翌年2回目に来日した際、吉野川のラフティングにお客さんとして来ていた美樹さんと知り合ったそうです。

美樹さん
私はその時、青年海外協力隊でグアテマラに行くことが決まっていて、ライアンもノルウェーでラフティングのお仕事が決まってて。だからはじめはお付き合いはせずに仲良くしていました。

世界中をフィールドに思い思いの暮らしを楽しみながら、時にはオーストラリアで、時にはグアテマラで会う機会を重ねていったお二人。そんな折、コロナ禍突入で国の移動制限がかけられる事態になりました。

美樹さん
一緒にいるためには、結婚するしかない!という話になって、すぐに結婚を決めました。

そうして、コロナ禍に二人で日本での暮らしを模索する中、ライアンさんの所属していた翻訳通訳の会社で、山都町へのALT(外国語指導助手)派遣の話が持ち上がりました。

ライアンさん
その時の上司がいい人で、「自然が好きなら山都はいい場所ですよ」と聞いて、それじゃあ行ってみようかなと。

美樹さん
最初は1年間と言われていて、私たちも割と軽いノリで来たんですよ。すると結構自然もいいし、滝もいっぱいあるし。ヤマGEN(山都町にあるパン工房)とか美味しいパン屋さんがあったから、「私、ここ住める!」と思って(笑)。それで移住しました。

ご自宅にて、ライアンさん得意のラザニアでランチタイム


現在は山都町内の一軒家を借りて生活しているお二人。最近では、お家に薪ストーブを設置した際にお世話になった方とのご縁で、ライアンさんが大工さんとして働き始めたそう。どんどんと山都町の土地に馴染み、人脈も広がり、暮らしを楽しんでいる様子が伝わります。


小さな幸せを感じられる暮らし

ラフティング、英語の先生、大工さん。多彩な好奇心で次々と楽しみを見出すライアンさん。さらに趣味は滝遊び、マウンテンバイク、釣りなどなど。自然の中で遊ぶのが好きなのは、美樹さんとの共通点のようです。夏場は毎週のように近くの滝に行って泳いだり、友人を招いて滝で遊ぶこともしばしばなんだとか。

お二人がよく訪れるというお気に入りの滝

ライアンさん
今年はヤマメがあんまりいなかった。でも私たちの師匠はヤマメ釣りに行くと50匹とか80匹とか。私は今年3匹しか釣ってないから、聞きたくないわ!ってなりました(笑)

実は、ここまでのお二人の会話の中で「師匠」という方が度々登場していました。一体、どんな方なのでしょうか?


美樹さん
山都町では移住者交流会が数ヶ月に1回あって、案内のハガキが来るんですよ。毎回アクティビティが違って、夏の時期はフットパスをしたり、3月はいちご狩り。ほとんど無料なんです。私たちも移住してすぐの交流会に参加して、そこで仲良くなったご夫婦のお家に遊びに行ったら、そのお隣さんが師匠でした。

ライアンさんの趣味が師匠とそっくりだったことで意気投合し、それ以来とてもお世話になっているんだとか。

ライアンさん
場所の文化とか、住んでる人の本当の生活、どういうことをよくしてるとか、全部教えてくれるからめっちゃ嬉しいですね。

美樹さん
ライアンがよく言うのが、「日本人はよくありがとうって言ってくれる」って。オーストラリアでは、優しさを当たり前と思う人が多かったみたいで。でも日本はお互いに感謝を表しあったりするし、特に田舎はそうじゃないですか。それがすごく自分に合ってるって。

ライアンさん
師匠もそんな人ですね。

美樹さん
「だまされても人に優しくしなさい」っていうのが師匠で。ライアンも似てるよね。
旅行に行ったり贅沢で大きいことも楽しいけど、コロナもあって、毎日のちっちゃい心地よさとか幸せをいかに自分たちが感じられるかかなと思って。それは意識してます。

地元の人との深い結びつき、温かさ。お二人に「山都町でこれからも暮らしていきたい」と思わせた一番の理由は、まさにそこかもしれません。

敷地内に実ったたくさんのゆずを一つ一つ収穫。こんな一コマもなんだか楽しそう

人がつながり、助け合い、広がるマーケットを

令和4年度の山都ラボでは、ライアンさんは「山都町マーケット」のプロジェクトオーナーとして、イベントの準備から開催までを行いました。

ライアンさん
オーストラリアではマルシェ(マーケット)が多くて、私も大好き。山都町は結構ポテンシャルが高いと思う。マルシェで有機農家さんや地域の人たちが売りたいものを売ったり、そこで友達もできるし、そういうことができたらというのが最初のイメージ。山都ラボの話を聞いて、ちょっとチャレンジしたかった。

大好きなオーストラリアのマーケットを、大好きな山都町でも。そして人の輪をつなぎたい。そんな純粋な思いでチャレンジしました。

ライアンさん
でも、初めてのことで難しかった! 最初どうしていいかわからなくて、日本の文化も違うし。役場の品田さんにいろんな情報を教えてもらった。やまと文化の森の後藤さんにはかなり手伝ってもらいました。全部が日本語でわからない言葉もあって、でも頑張りたかった。

プロセスごとにやることを美樹さんと何度も話し合って協力し、周りの方にもたくさん力になっていただいて、ようやく迎えたイベント当日。やまと文化の森で行われたマーケットは多くのお客さんで賑わい、大盛況を収めました。

ライアンさん
やってよかった。いろんなビジネスが来て、それでモノが売れてよかったです。家族や友達も来て、新しく知り合いになった人もたくさんいた。1回だけで終わるのはちょっともったいないから、山都の人で一緒にサポートしてみたいという人とか、英語を話したい大学生とかを熊本市からボランティアで募集するのもいいかなと思います。

苦労した初挑戦の中にも、得た達成感、目の前で人と人がつながった感覚。
それをより深く感じられたのは、お二人が山都町に来て以来、色々な人に声をかけてもらい、人のつながりに助けられ、温められる中で「毎日を大切に楽しめる心の土台」を得ていったからかもしれません。

そしてこれからも、その温もりを大切にする毎日の暮らしの中で、また隣の人を温められるような人のつながりが広がっていくことを願います。


◇山都ラボ ラボサポーター申し込みフォーム
https://forms.gle/6z4jXk7ZreNihGKs8


企画制作:合同会社ミミスマス
インタビュー/文/写真:中川薫