【山都ラボインタビュー】週末は冒険の旅へ。クライミングで家族も地域も一つの頂へ:山本一憲さん
山都町の人材育成事業『チャレンジ・応援!山都ラボ』では、山都町をフィールドに自分でプロジェクトを立ち上げて楽しみながら活動する町内外の方を『プロジェクトオーナー』としてサポートしています。
今回の記事では、令和4年度からプロジェクトオーナーとして参加し、令和5年度も継続してプロジェクトに取り組んでいる山本一憲さんを取材しました。
プロフィール
名前:山本 一憲(やまもと かずのり)
出身地:山都町柳井原(旧蘇陽町)
居住地:熊本市
プロジェクト:山都町にある宝石を活用し、クライミングで地域活性化!!(すばらしい効果がてんこもり)
旧蘇陽町にあたる山都町柳井原出身の山本一憲さんは、クライミング歴26年と筋金入りのクライマー。
山本さん
小さい頃から高いところは好きでした。友達とよく土手でつこかせ(転ばせ)あったり、竹に登って、竹から竹に綱渡りしたりしてました。
そんなやんちゃな遊びを通して培われたアウトドア精神で、青年時代の山本さんはスノーボード、カヌー、サーフィンなどアウトドアスポーツにのめり込んだそう。その中で段々と「クライミング1本」に絞られていきました。
山本さん
クライミングは手軽で、道具を使わないからお金がかからない。地元の熊本は岩が少ないので、いろんなところに行きました。九州だと宮崎の日之影、北方、比叡などが有名ですね。
日本国内でも各地を回ったという山本さんですが、そのクライミング熱は国内だけに留まらず、海外にも足を伸ばすほどで、地球規模で数多くの岩を登ってきたといいます。その魅力を尋ねると、
山本さん
非日常感ですかね。冒険的というか。難しい岩を登る時は何も考えずに無心になる。岩と一体になった感覚があります。
言葉少なに語る中でも、常に柔らかい表情を見せる山本さん。自身を「開拓クライマー」と呼び、ここ数年、週末は家族でクライミングエリア開拓のため、山都町の菅集落へ通っています。地元山都町のクライミングエリアを整備し、自身の冒険心を楽しみながら地域活性化を目指しています。
ちなみに、奥様のあゆみさんともクライミングがきっかけで知り合ったのだそう。子どもたちも毎週のように来ているだけあって、スイスイ自由に岩場を登る様子を見ると、まさにクライマー一家だと頷けます。
クライミングエリアのお披露目は大好評!
「好きだから開拓する」という山本さんが数年前から続けてきた、山都町菅のクライミングエリアの整備。岩に張り付いた苔や草の掃除や、周辺の地面の草刈り・整地、岩へのアンカーの設置など、安全にクライミングできるだけの整備をするには、時間もお金もかかります。
そんな時に見つけたのが「山都ラボ」でした。山都町役場から金銭面の支援も受けながら、人との繋がりもでき、さらに町内の人たちに自分の活動をPRして知ってもらうことができる、とてもいいチャンスだったといいます。
令和4年度の山都ラボでは、開拓整備と並行して岩場のエリアガイドも作成。岩の課題(登っていくラインを示したもの)とグレード(その課題を登る難易度)を記載した他、周辺地域のおすすめカフェやパン屋さんなどの情報も盛り込みました。そのエリアガイドの冊子は、制作した200部が全て完売し、クライマーからの需要がしっかりと感じられる結果となりました。
また、令和4年度ついに整備を終えて完成させたクライミングエリアの公開イベントを、令和5年4月から6月に開催。SNSを中心とした情報発信の甲斐あって、遠くは東京から、九州もほとんど全県からクライマーたちが訪れ、毎週末のように大盛況。地元熊本のテレビ番組でも特集されるなど、山都町へ新たな活気と話題性をもたらし、大好評を得ました。
今年は第2弾!エリア拡大でさらに地域を活性化
令和5年度も継続して山都ラボのオーナーとして参加している山本さん。昨年度の成果と賑わいの実感を受けて、今年は第2弾。昨年お披露目した場所の上部に位置する「夫婦岩」をきれいに整備して新たにエリア拡大し、第2弾の公開イベントを通じてさらなるクライマーを呼び込み地域活性化に貢献したいと考えています。
山本さん
昨年は意外にも好評でした。このくらいの岩数だったらあんまり人が来ないかなと思ったんだけど、たくさんの人で賑わいました。地元の方からも喜んでもらってます。ここの地主さんはお話好きの方で「(岩に登ることの)何が面白いんだろうね」と言いながらも、よく様子を見に来てくださいます。
そんなお話を聞いていると、タイミングを見計らったかのように颯爽と軽トラックで現れたのは、この岩場の地主である山村さん。山本さんのクライミングエリア開拓の申し出を快く受け入れ、整備の作業の度に顔を出してくださる、山本一家の心強い応援団長です。これまでも地元の方に、草刈りや重機での作業などたくさん加勢していただいてきました。
この地域は「菅迫田棚田」として「日本の棚田百選」にも認定されている場所。棚田のオーナー制度を通して長い間外部の人を受け入れてきた経緯もあり、そんな背景からも、この集落の方々が受容の心をもって訪れる人に接する懐深さが感じられました。
発端は、非日常の冒険を求める「自分の楽しみ」だったことが、家族へ、地域へと輪を広げ、これだけ多くの人を山都町へ呼び込む観光資源になりつつある、山本さんのクライミング。まさに人の思いが人を呼び、人が集まって新しい価値が見出されていく過程を垣間見るようです。そしてまた、そんな父親の姿を見て育っていく子どもたちは、この上ない学びを得ているようにも見えました。
山本さん一家も、山都町も、地域の方々も、それぞれが岩場を登り頂点で一つになっていくこの取り組みを、これからも応援したいと思います。
◇Instagram @yamato.boulder
https://www.instagram.com/yamato.boulder/
◇山都ラボ ラボサポーター申し込みフォーム
https://forms.gle/6z4jXk7ZreNihGKs8
企画制作:合同会社ミミスマス
インタビュー/文/写真:中川薫