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【山都ラボインタビュー】「山都町の歌」でふるさとの宝を伝え、共鳴を生む:塚本美樹さん

山都町の人材育成事業『チャレンジ・応援!山都ラボ』では、山都町をフィールドに自分でプロジェクトを立ち上げて楽しみながら活動する町内外の方を『プロジェクトオーナー』としてサポートしています。

今回の記事では、令和4年度からプロジェクトオーナーとして参加し、令和5年度も継続してプロジェクトに取り組んでいる塚本美樹さんを取材しました。


プロフィール

名前:塚本 美樹(つかもと みき)
出身地:福岡県福岡市
居住地:福岡県福岡市
プロジェクト:山都町の歌を作る

塚本美樹さんは、福岡市在住のジャズピアニスト。夫・間村清さんと共に、音楽ユニット『Visions(ビジョンズ)』として日本各地を駆け回りながら音楽活動をしています。

そんな活動の一つとして、ここ数年間であらゆる「町の歌」の制作に携わってきたという塚本さん。令和4年度から参加した山都ラボでは「山都町の歌を作る」というプロジェクトテーマのもと、山都町を知るところから始め、町の歌を制作しました。さらに、令和5年度も継続してプロジェクトを進めており、制作した山都町の歌を広めるためのコンサートを開催するなど、度々山都町を訪れながら取り組みを続けています。

まずは、福岡市在住の塚本さんが山都町と出会ったきっかけをお伺いしました。

塚本さん
石井陽子さんがいなかったら、山都町とVisionsが結びつくことはなかったですね。福岡市のアーティストを介して石井さんと知り合いました。石井さんは「住むなら不便なところがいい」と、ご夫婦で十数年前に福岡から山都町へ移住された方で、自然を守る活動をされています。

石井陽子さんは、山都町の旅行会社「ECO九州ツーリスト合同会社」で地域の自然や文化を体感できるツアーを提供するお仕事をしている方。プライベートではトレイルランニングで九州中の山を駆け巡り、塚本さん曰く「その姿はまさにカモシカのような美しさ」。山都町のパンフレットでも、石井さんのことが詳しく紹介されています。

山都町のパンフレット『山の都はワンダーランド』より。写っているのが石井陽子さん

塚本さん
山都町のパンフレットを見たりして、とても良いところだなと。これまでも、お隣の宮崎県の西米良村の神楽とコラボしたり、町の歌を作っていました。山都でも町の歌を作ってほしいよねという話が出て、何かきっかけがないかしらと思ったとき、山都ラボの話があって。アート的、文化的なものがあってもいいよねということで、採択されました。

今回の「山都町の歌を作る」プロジェクトを進めるにあたって、石井さんが現地の案内や町の人とのつなぎ役を担ってくれたと塚本さんは語ります。

そうして訪れ、出会ったのは、老舗飲食店、酒造、職場体験の中学生、先生、図書館の館長さん、絵本読み聞かせ会の皆さん、文化施設の方々、若いオーナーのドーナツ屋さん、各種生産者や観光事業の方々……。山都町の様々な場所を見て、文化や歴史を知り、地元の産業に携わる方々と話をする中で得たインスピレーション。そこから「山都町の歌」が完成しました。

「山都町の歌」初めてのお披露目

「山都町の歌」〜未来かけるふるさと〜 が完成!

「山都町の歌」〜未来かけるふるさと〜
作詞作曲:塚本美樹

1.
神々の 願い宿るやしろ
青き杉照らす 朝のひかり

色とりどりの命 山の都 咲き誇り
豊かな実り 願う

そよかぜに吹かれて 自由な君になれる場所
星空を見上げて 自由な僕がいる ふるさと

2.
山の春桜 夏の川辺
来る秋の 深き実りたたえ

幼きも老いも集い 八朔のやま 祭りの音
豊かな実り祝う

ほらてとてつないで、そうこころつないで
優しい みらいへと いつか みちびかれる ふるさと

3.
人の世を語る 太夫(たゆう)の調べ
人々を癒す 昔語り

蘇陽 清和 矢部の町 三つの響き支え合い
豊かな叡知歌う

ときを越え過去へと 繋がる君になれる場所
かがやく みらいへと つなぐ私がいる ふるさと

地図にはない 道を僕らは辿り 記した
ひかりの方さす 羅針盤
美しき峰めざし 行く者へ
かがやく虹めざし 行く者へ


「山都町の歌」を歌う石井さんと、山都町役場の方々


塚本さん

今年2月の山都ラボ報告会で、歌を披露しました。事前に音源と歌詞カードをお送りしていて、そしたら「みんなで覚えて歌いますね」っていうことで、石井陽子さんを中心に役場の方などがステージに上がって歌ってくださり、とても感動的でした。

このときに披露された「山都町の歌」は、次の動画にてご覧になれます。(2:03:40あたりから)


このお披露目を皮切りに、令和5年度は山都町立図書館でのコンサートを開催。町内外から20名ほどが来場し、「山都町の歌」を含めVisionsの迫力ある生演奏を楽しみました。

塚本さん
ああいうことが何度かあるといいんだろうなって思って。シニアクラブの会長さんもお越しくださって、コンサートが始まる前に歌詞カードをじーっと読んで「いいね」って言ってくださって。ジーンとしましたね。ここでいろんな思いでずっと暮らしてきた方々がこの作品を良いと言ってくださった。それが本当に嬉しかった。
どうやってこの歌詞が出来上がったのか、どういった方のご協力があってできたのかを知ってもらう。本当にいろんなところを回って、見るだけじゃなくて、そこの方々と話す。そこでどんなふうに物を作ってらっしゃるのか、ドーナツを、お野菜を。どういう子育てをしてるのか。そういう話からじゃないと、歌って、曲って生まれないんですよね。

人の営み、人との繋がりや対話の中からこそ紡ぎ出されるもの。この土地に長く暮らす方からもらった「いいね」の言葉。それは紛れもなく、今の山都町を捉えた「真実」といえるのかもしれません。

歌で広がる、尽きることのない繋がり

塚本さん
山都町だから体感できる、素晴らしいものがあるんだよって、子どもたちにも伝えたい。他のとこにはないよって。自分の町にいるとわかんないんだよね。こんな宝物みたいなものが溢れてるところに暮らしてる、そこで育ってるってことはすごいよって。これを守っていってね。いつかわかるからっていうことを、すごく歌の中に込めたっていうか、込めざるを得ない。こんないい町だから。歌を伝えることで、それを伝えたいんですよね。

山都町と出会い、知り、歌に込めた思いが町の人に歌われることでより一層深まっていく。そういった融合が生まれ始めているからこそ、これからさらに力を入れたいことがあると塚本さんはいいます。

塚本さん
どうやったら広く伝えられるかなというのがこれからの課題。Visionsで学校コンサートを全国で開催しているんですね。それは子どもたちにとっても良い活動だから続けているんですが、それはやっぱり受け皿があって成り立つわけです。山都町でもそういったところへ動いてくださる体制が芽生えればいいなと思うけれど、難しい現状もある。私も頭をひねって、そこは絶対考えていきたいんだよね。

町の魅力を伝える歌を、町の子どもたちにこそダイレクトに届けることの重要性、影響力。音楽の力を日々感じとっている塚本さんだからこそ、確信と熱意を持って訴えかけられることだと思います。

さらに、塚本さんの山都町愛はとどまることなく、福岡市の人々も巻き込んだ新たな繋がりを生み出しているんだとか。

塚本さん
山都町と福岡市の人を繋いだプロジェクトとして、今年の夏に福岡市で、山都町のECO九州ツーリストのお二人(代表の寺崎彰さん、石井陽子さん)をゲストスピーカーに招いての勉強会を開きました。本当の観光ツーリズムとはなんだろうという話をしてもらい、とても好評でした。その最後に、「山都ラボに参加して歌を作りましたので、披露します」ということで演奏して。そこで、「あの歌詞が観光案内にもなるんだな」と気付いて。これで(山都町を紹介する)一つの形が出来上がるんじゃないって。

福岡市で開かれた勉強会。前列中央が塚本さん、寺崎さん、石井さん

この集まりをきっかけに、実際に山都町を訪れるキャンプツアーも開催。さらには、そのキャンプ参加者さんとの繋がりがご縁で、福岡市役所のロビーにて山都町の写真展の開催が行われました。(2024年1月13日(土)〜18日(木))。プロ・アマチュアの作品も織り交ぜた展示で、そこでもVisionsの演奏が披露されたそうです。 

塚本さん
コラボが止まりません! 私、一度何か始めたら、終わっちゃうのが嫌な人なんです。アートっていうのは限りがないと思っていて、尽きることがない。やればやるほど膨らんでいくのが我々の携わっているものだから。種を植えて、水をやって、花が咲いて実になって、やっぱり種になっての循環でしょ。

そう笑う塚本さんの魅力は、好奇心を持って人に深く関わり、音楽を通してそこにある「真実」を捉え、共鳴しあった全ての繋がりを途絶えさせずに、どんどんと巻き込んでいくエネルギッシュさに他なりません。

塚本さん
歌詞とメロディー、作品の意味合いとかパワーを感じられたから、今回「山都町の歌」を作ったことは私にとってすごく感動的でした。ここは特別な町なので。これを伝えたい。

山都ラボを通して生まれた「山都町の歌」。皆の思いがこの歌に重なる時、溢れ出た雫が波紋となって波打ち、山都町の人々へ、そこから繋がる次の人へ。そうやってこれからもどんどん広がりを見せる。そんなワクワクを秘めているような気がしてなりません。

◇Visions
https://visionsmk.web.fc2.com/

◇山都ラボ ラボサポーター申し込みフォーム
https://forms.gle/6z4jXk7ZreNihGKs8


企画制作:合同会社ミミスマス
インタビュー/文/写真:中川薫