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【山都ラボインタビュー】あなたの身体は何でできてる?ジビエバーガーで伝えたい食のこと:『808diner』渡邉太郎さん

山都町の人材育成事業『チャレンジ・応援!山都ラボ』では、山都町をフィールドに自分でプロジェクトを立ち上げて楽しみながら活動する町内外の方を『プロジェクトオーナー』としてサポートしています。

今回の記事では、令和5年度にプロジェクトオーナーとして参加し、その後も山都町を拠点に活動を続けている渡邉太郎さんを取材しました。


プロフィール

名前:
渡邉 太郎(わたなべ たろう)
出身地:山都町
居住地:合志市
プロジェクト:
規格外有機野菜の集荷場

普段はフードトラックで山都町のジビエや有機野菜を使ったハンバーガーを販売している渡邉さん。

今回取材に訪れたのは、渡邉さんが今年(令和6年)から借りることになった廃校「旧中島西部小学校」の給食室です。この学校、実は渡邉さん自身が子どもの頃に通っていた母校だそうです。

改装や機材導入を経て、今年(令和6年)の8月から給食室を使い始めた

渡邉さん
「学校に畑があって、野菜をつくってました。ホウレンソウ、白菜、ダイコン、トマト、さつまいもとか。放課後に焼き芋をしたりしてましたね。
今使わせてもらってる給食室は、亡くなった祖母が当時は働いてて。給食のおばちゃんをしてました。」

ヨーロッパで得た価値観を手に、故郷の山都町へ

小さい頃の原体験を経て、祖母も働いていたという母校に戻ってきた渡邉さん。ここに帰ってくるまでに、どのような道のりがあったのでしょうか。

渡邉さん
「学校を出て、電気工事の仕事を5年やったあと、飲食に興味があって焼肉屋に転職しました。ブランド牛や無添加、オーガニックの食材を扱う有名店で、6年修行しました。
そのあとは飲食で独立をしようと思って、ヨーロッパへ肉の勉強に行きました。3週間ぐらいの旅で、うちの奥さんと一緒にスペイン、イタリア、フランスとまわって。いろんなお店で食べて、シェフの話を聞きました。」

このヨーロッパでの経験が、渡邉さんに大きな影響を与えたといいます。

渡邉さん
「向こうのシェフと話してて、畜産のあり方が日本と全然違うんですよね。その人は「食べるなら良いものを」という考えがあって、ストレスフリーな環境で育てられた牛の肉を使ってました。
そこから、自分もオーガニックやジビエに興味を持って、そういうものを使うようになりました。

ヨーロッパで大きなものを吸収して日本に帰ってきた渡邉さん。今ではジビエバーガーのイメージがすっかり定着していますが、実はもともとハンバーガー屋さんとして開業することは全く考えていなかったそうです。

渡邉さん
「そもそも、ハンバーガーってあんまり好きじゃなかったんですよね(笑)ほら、すごくジャンキーなイメージじゃないですか。
なんですけど、たまたま、知り合いの飲食業の方から「今使ってないハンバーガーのフードトラックがあるから使っていいよ」と声をかけてもらって。それと、山都町役場の方が自分のことを知ってくれてて、「山都町のジビエを扱ってみないか」と誘ってもらって。
そのときコロナの影響もあって、テイクアウトの方が売りやすいというのもあったんで、フードトラックでジビエバーガーを売るという形で開業することになりました。
でも始めてみると、ハンバーガーって意外と奥深くて。レタスが先なのか、肉が先なのかっていう、積み上げる順番ひとつとっても味が変わるんで面白いですよ。」

太郎さんが経営する『808diner』のフードトラック。
熊本県を中心に各地でジビエバーガーやブリトーなどを販売する

山都ラボがきっかけで、母校を拠点に

令和5年に山都ラボのプロジェクトオーナーとして手を挙げた渡邉さん。その動機や取り組みについて伺いました。

渡邉さん
「バーガーをつくるのに山都町の有機野菜を使ってるんですけど、農家さんと話すなかで、野菜の廃棄がたくさん出ているって話を聞いて。せっかく山都町はオーガニックでブランディングしてるのにもったいないなって。それで、そういう野菜の集荷場が山都町にできて、そこが食育の拠点にもなったらいいなと思って。それをやるために山都ラボに参加しました。」

「まずは、廃棄されるはずだった野菜を自分で集めて売ってみました。
やってみて気付いたのは、生の野菜よりもドライ、粉末の方が良かったんじゃないかってことですね。保存が利きますし、離乳食なんかにも使いやすいので。それと、天候によってはそもそもあまり廃棄野菜が出なかったりするので、(量が安定せず)実際に売るときの難しさを感じました。

山都ラボでの取り組みは、必ずしもスムーズにはいかなかったとふりかえる渡邉さん。それでも、「チャレンジしてみて良かった」といいます。

渡邉さん
「自分は合志市に住んでるんですけど、仕事の拠点は山都町に持ちたいと思ってました。それでラボに出て、自分のやりたいことを発表したら、すぐに坂本町長(当時は総務課長)が声をかけに来てくれて。そこから話が進んで、ラボに参加した年(令和5年度)のうちに今の給食室を借りられることが決まりました。そこから中を改装して機材も入れて、今年(令和6年度)の8月からこの施設を使い始めました。
ラボをきっかけにいろんなことが動いて、経営的な面でもスキルアップできたなと感じてます。」

山都ラボの報告会では会場でブリトーを提供。
多くの来場者が渡邉さんの取り組みを舌で味わいました

おいしいから食べてもらえる。新たなる食の挑戦

山都ラボを経て、故郷である山都町への関わりがより深まった渡邉さん。今後も様々なことにチャレンジしたいと目を輝かせます。

渡邉さん
「加工品の販売に力を入れていきたいですね。野菜のドライ加工とか、ソースの開発とか。ソースは味噌系、BBQソース、スペイン料理で使うようなハーブ入りの酢みたいなやつを考えてます。肉の加工は、ジャーキー、ベーコン、ハムを試作中です。それで、加工所はゆくゆくは人に任せられると理想ですね。
あとは今の学校のグラウンド、体育館も使えるようにして、子ども向けのキャンプで食育をしたいです。人間って3歳までに食べたものをおふくろの味として認識するらしいので、子どもの頃の食事って大事なんですよね。」

「うちはジビエを使ってますけど、「ジビエバーガー」という見せ方はあえてやってません。おいしいものを作って、お客さんや子どもが喜んで食べて、それが気付いたら身体に良いものを食べてることになる。そういうのが理想ですね。」

お世辞抜きにおいしい、メニューの数々


言葉で語らずとも、大事なことは食で伝わる。
山都町の新たな拠点で、渡邉さんのチャレンジは続きます。

◇出店情報や出張ご予約などはこちら:instagram『808diner』
https://www.instagram.com/808diner/

◇山都ラボ ラボサポーター申し込みフォーム
https://forms.gle/Vo66PqHdmWsVtMg98

企画制作:合同会社ミミスマス
インタビュー/文:内村光希
写真:中川薫・内村光希