【山都ラボインタビュー】ハーブティーで人を癒し、働く場づくりで社会とつながる生きがいを:吉山龍弥さん
山都町の人材育成事業『チャレンジ・応援!山都ラボ』では、山都町をフィールドに自分でプロジェクトを立ち上げて楽しみながら活動する町内外の方を『プロジェクトオーナー』としてサポートしています。
今回の記事では、令和4年度からプロジェクトオーナーとして参加し、その後も山都町で活動を続けている吉山龍弥さんを取材しました。
プロフィール
名前:吉山 龍弥(よしやま りゅうや)
出身地:山都町(旧矢部町)
居住地:山都町
プロジェクト:町も、人も、元気になる!「世界に通用するハーブティーブランド化プロジェクト!」
山都町の旧矢部町出身で、地元の矢部高校を卒業した吉山龍弥さん。大学ではリハビリテーションを学んだ後、県外で就職。小児のデイサービスや、発達障害専門外来の立ち上げなどに携わってきました。その中で、福祉でのソーシャルビジネスを学びたいという思いが芽生え、福祉系大手企業へ転職して経験を積み、現在はUターンして山都町内の整形外科で作業療法士として働いています。
吉山さん
建築学科に行こうと思っていたんですが、大学受験に失敗して、滑り止めで受けていたリハビリテーション学科に合格して。たまたま入ったんですが、そこからどんどんのめり込んでいきました。
就職してすぐは、小児のリハビリテーションに配属されたという吉山さん。当時をこう振り返ります。
吉山さん
新卒で20代前半のセラピストに、障害を持つ子どもの親御さんたちがすごく頼ってきてくださって。「小児は自分に向いてない」と思ってたけど、すごくやりがいを感じたというか。そこで使命感が芽生えて、リハビリテーションをして子どもと一緒に遊んだり、ものづくりを通して徐々に「この子たちのために何かできたらいいな」と思ったのが、将来的に自分で何かしたいと思うようになったきっかけです。
現時点では(自身の事業内で)障害がある方を雇用するところまではいってないんですが、いずれはそうなりたいなと思っています。
障害を持つ人も安心して働ける社会を、自分の足元から作っていきたい。そんな大きなミッションを掲げて、山都町へUターンしました。
地元で、ものづくり✖️雇用の場づくりに挑戦
山都町へ帰郷してからも作業療法士としての仕事を続けている吉山さんですが、本業の傍ら、様々な事業を立ち上げています。
吉山さん
元々ものづくりとか、自分で作ってみるのが小さい時から大好きで。例えば、低学年の時に、庭に池を作りたいなと思って穴を掘ったんですけど、当時防水加工とか何もわかんないから、水を溜めたら当然抜けていくんですよ。それをどうやったら魚が住めるようになるかっていうのをずっと考えたりするのが好きでした。
元は建築学科を志していたというだけあって、幼い頃から好きだったものづくりがいつか仕事になったらいいなと思っていたという吉山さん。2020年に吉山さんのお兄さんと従姉妹(令和4年度山都ラボオーナー 藤川里奈さん)の3人で、ハンドメイドのアイスクリームショップ「BLANCO ICE CREAM」(ブランコアイスクリーム)を立ち上げました。
原料の調達から、製造、発送までの全てを山都町で行っており、その美味しさとデザイン性の高さも相まって、全国から多くの注文が入るほどの人気ぶり。今年の5月には山都町に実店舗をオープンしました。
アイスクリームの事業が軌道に乗ってきた矢先のこと、吉山さんは新たな素材に出会います。それがハーブティーでした。
吉山さん
(本業とブランコの運営などを)詰め込みすぎて自分が体調を崩した時期に、たまたま飲んだバジルティーがすごく美味しくて、寝る前に飲むとすごく癒されて。自律神経系のバランスが整ってリラックスできて、すごくよく眠れた体験があったので。それでハーブを調べていくと、素人でも育てやすいというところがあって、そこから入りました。
山都町でハーブティーを作ってみよう。それには耕作放棄地を利用したい。Uターンして見えてきた山都町の課題にも何かアクションを起こしたいという思いが重なった時、令和4年度『山都ラボ』のオーナー募集情報が目に留まり、応募しました。山都ラボの支援の元、農地の確保や商品開発、クラウドファンディングなどを行い、今年の11月末にはついに商品パッケージが出来上がりました。
吉山さん
アイスクリームの製造と並行しての作業だったので、バジルの成長に収穫が間に合わなかったり、商品パッケージのデザイン完成が遅れたりして計画通りにはいかなかったんですが、収穫は初めてにしてはよかったかなと思います。面積あたりの収穫量をもっと上げるっていうのが今後の課題です。
吉山さんは事業を進めていく上で、自分が好きなものを題材にいい商品を作ることと同じくらい、雇用の場を作ることに、とても重きを置いています。
吉山さん
農業は障害者雇用ともすごく相性が良くて。やってみてわかったんですが、クラフトアイスって製造の難易度が思ったより高かったんです。なので、将来的な雇用のことを考えた上でも農業をやってみようかなと思いました。
さらに、障害者の方に加えて、高齢者の働く場づくりも併せて見据えているといいます。
吉山さん
この前も店舗にいらした方と話したんですが、サラリーマンの方で「来年退職でまだまだ働けるけど、先が不安なんですよね」って。農家の人はいい意味で一生働けるんですけど、サラリーマンは退職したら、まだ働けても、趣味の時間も持て余すような方がいると思います。そういった人たちの働く場になれたらと思っています。
元々「ものづくり」が好きだったところから、作業療法士として色々な場所で経験を積む中で「多くの人が活躍できる世の中に」という価値観が加わり、その2つが交差して今、「ブランコ」から山都町に新たなフィールドを生み出そうとしています。
社会にインパクトを与えるための挑戦を
吉山さんの「障害者や高齢者へ向けた雇用の場づくりをしたい」という思いを、どう事業に反映させていくか。その指針となる考え方は、作業療法士として以前勤めていた企業での経験が大きな影響を与えているといいます。
吉山さん
パーパス経営というか、目的や社会的に意義がある要素がないとだめだと思ってて。でも規模がないと社会に与える影響、インパクトはちっちゃいなっていうのは前職の大きな企業に勤めたことで感じたので。今は資金力がなくて、家庭もあるしなかなかリスク取れないなって感じなんですけど、どこかで踏み込まないといけないなと思っています。
吉山さん
リハビリの観点でいうと「健康寿命を延ばす」みたいなところがあるんですけど、介護状態になる一歩手前でいかに止めるかというところが大事なんです。研究結果でも、自分の役割とか日常生活にハリがある人が要介護状態になりにくいと言われています。
山都町に若者を呼び込むのも大事なんですけど、今いる(人口の)60%くらいの高齢者の人たちが元気でいることが山都町にとって大事だと思うので、その辺の健康寿命を延ばす取り組みとしても、ブランコを使って欲しいという思いはあります。
山都町が直面している多くの課題。その中で最も大きな「人口減少」に関わる課題の中でも、吉山さんが特に着目するのは、今ここに住む多くの高齢者が健康で喜びを持って一日一日を過ごしていけるかということです。そのために、どんなアクションを起こしていけるのか。
吉山さん
「働く」ってことが僕のキーワードの1つになってます。日本って憲法で唯一働くことが義務付けられた国って言われるくらい、日本人は働くことが好きで、働いていると社会参加になっている、生きがいが持てているって実感できる人が多いなと思っていて。それは障害者も、高齢者も一緒で、働くとそこに居場所があって、働いてると表情も変わるし、社会の一員として自分がそこにいるんだって実感が持てるんだと思います。
社会との接点という意味での「働く」ということ。
働くことで、自分が社会の一員として大きな輪の中での役割を担っている感覚。それは共同体の中で生きている私たちの誰しもに当てはまる「生きがい」かもしれません。
大事にしたい意義をぶれずに持ち続け、業績の面でもしっかりと成長していくために。
山都町へ、さらに大きな社会全体へとインパクトを与えていくために。吉山さんの挑戦はこれからも続きます。
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企画制作:合同会社ミミスマス
インタビュー/文/写真:中川薫