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せっかく仕事するなら、地域に関わりたい。地域おこし協力隊として山都町に飛び込んだ若者の話:出口貴啓さん

『地方創生』という言葉をよく見かけるようになってはや数年。

地域をテーマにしたテレビ番組が人気になったり、「地域おこし協力隊」という制度が認知度を高めたりと、わたしたちが地域に意識を向ける機会は徐々に増えてきているように思えます。

今回の記事では、地域おこし協力隊として山都町に移住し、現在は山都町役場の職員として地域おこし協力隊の担当をしている出口貴啓(たかひろ)さんにお話を伺いました。

子どもの頃から地域での取り組みに興味を持ち、大学での理論的な学びと地域おこし協力隊としての実践の両方を経験してどんなことを感じてきたのか。

地方での取り組みに興味がある学生さんや、地域おこし協力隊に興味がある方は特にご覧ください。


地域に関わる原体験は、地元への危機感

出口さんの出身は、山都町よりさらに山あいの熊本県五木村。子守唄の里としても有名なこの村で、中学生までを過ごしました。この頃の経験が、地域での活動をスタートさせた原体験になっているそうです。


出口さん

地元の五木村にいた中学生の頃、危機感というか、見るからに寂れていく、寂しくなっていくのを感じてました。お店がなくなったりとか、自分が卒業した保育所や小学校がなくなったりとか。

一方で、当時のテレビや新聞ではその頃から「地方創生」というのが取り上げられてたんですね。この地域にはこうやって人が来てますよ、こうやって盛り上がってますよ、みたいな。

そういうのを見て、こういうのを五木村でやったら地域を盛り上げられるんじゃないか、って中学生ながらに考えてました。新聞を見ながら、俺だったらこうするのに、俺なら絶対これやるな、とか。「この税金のうち、1,000万円でも自分の裁量で使わせてくれれば…」みたいなことを何の根拠もなく考えてました。中学生の多感な時期で生意気だったんでしょうね。

でも今の矢部高校の生徒と話してても、なんか地域が寂しくなってるな、地域に関わりたいなと考えている子が一定数はいるので。自分もそういうタイプだったのかもしれません。


大学を出てからも地域に関わるため、山都町の地域おこし協力隊に

五木村の中学校を卒業した後は、熊本市内の高校、大学へと進学。大学で学問として地域づくりのことを学ぶなかで、ある山都町の方と知り合い、それがきっかけで山都町との関わりが始まったとのことです。


出口さん

文科省の『地(知)の事業』というのがあり、大学の特任准教授として山都町在住の方が来られていて、山都町でもフィールドワークの設計などをされてました。

2016年に起きた熊本地震で県内の学生のボランティア意識が高まった時期でもあり、自分が地域でこういうことをしたい、ボランティア関係でこんなことをしたいというのを聞いてサポートしてくれて。色々と連れていってもらって、その流れで大学生の頃から山都町とも関わりができました。

熊本地震や2020年の豪雨では、どっちも地域づくりのネットワークがお互いに支援し合っているのを見ました。地域づくりにずっと取り組んできた方がいると、その周辺では炊き出しがきちんとされていたりするんですね。コミュニティがしっかりしているところは外部からの支援を受けやすい、いわゆる受援力が高いというのを肌で感じました。

大学生の頃に起きた災害を通じて、地域のネットワークの重要性を感じた出口さん。そんななか、卒業後の進路を決める時期に差し掛かります。

出口さん
大学では就職活動もしてたんですけど、やっぱりどうせなら仕事としても地域に関わりたいと思ってて。つながりのあった山都町の地域おこし協力隊でそういう募集もあったので、応募して採用していただいた、という形です。

それでこのとき、お世話になっていた先生から「協力隊と同時に大学院も行ったら?」と勧められて、言われるまま「じゃあ行ってみますか」と大学院にも行って。どちらかというと協力隊としての活動が中心で、大学院にも行っていた、という感じですね。大学院は卒業まではしていないので。

大学院に行ってみて、やっぱり学問分野の地域づくりと現場のプレイヤーでは視点が違ったりとか考え方が違ったりとか、違いを知れたのは貴重な経験にはなったかなと。どっちかがすごいとかではなくて、どっちも必要な視点で、こういう見方もあるんだな、と知れたのが大学院に行った意味になるのかなと思っています。

山都町との関わりは大学生の頃から始まった


このような流れで、地域おこし協力隊と大学院生の二足のわらじという、ちょっと珍しい形で山都町の暮らしがスタートしました。

地域おこし協力隊としては、山都町における移住の窓口である『山の都地域しごとセンター』での移住定住に関する業務や、地元高校の魅力化、そして大学との連携を通じた地域の担い手育成に従事。その経験を活かして、現在は山都町役場の職員として地域おこし協力隊の担当をしています。

現在は、山都町役場の庁内で主に地域おこし協力隊の運用業務に携わっている


経験者としてサポートできます!求む、新たな仲間

山都町の地域おこし協力隊は14名(2023年11月時点)で、それぞれが町の観光施設や農業法人、まちづくり会社など、地域の様々な受け入れ団体で活動しているのが特徴です。

出口さん
隊員の方は会計年度任用職員として山都町役場で雇用して、受け入れ団体で活動していただいています。任期後は、受け入れ団体でそのまま雇用するか、起業、新規就農というのが町の推奨している流れですね。

どんな人が協力隊に向いているかというと、受け入れ団体によってこういう方を希望します、というのもあるので、最終的にはその団体さんと相性が良いか、というところになります。相性をみるために、事前に現地に来てもらって、現地での色々な説明をしてから面接をするようにしています

逆に、自分のように大卒で協力隊になる、というのは正直ハードルが高かったと思います。他の隊員さんをみてると、前職の経験を活かして自分の活動をされたり、任期終了後に向けて自分をマネジメントされたりしてるので、大卒だとそこまでは難しいのかなと。

ただ、幅広く地域で活動、挑戦してみたいという方には山都町は面白いと思うので、そういう方はぜひチャレンジしてもらえればと思います。問い合わせや応募をしてくれた人は、まずは私の方で対応しますので、気軽にご連絡ください。


以上、出口さんのインタビューをお届けしました。

地域に関わるための手段として、まずは自分が住んでみる。住んでみるからこそ地域の実情が分かって、関わりが深まったり、自分の活動が変化したりする。

そのための手段として、地域おこし協力隊は1つの有力な選択肢になります。経験者の出口さんが担当というのも非常に心強いポイント。

地域に関心があり、山都町に飛び込んでみたい方はぜひ地域おこし協力隊をご検討ください。

◯山都町地域おこし協力隊の募集情報はこちら
https://www.town.kumamoto-yamato.lg.jp/kiji0038537/index.html

◯総務省 地域おこし協力隊とは
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/02gyosei08_03000066.html

企画制作:合同会社ミミスマス
インタビュー/文:内村光希
写真:上野諒