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【山都ラボインタビュー】アートの力で、山都の「人の魅力」を引き出したい:興梠優護さん

山都町の人材育成事業『チャレンジ・応援!山都ラボ』では、山都町をフィールドに自分でプロジェクトを立ち上げて楽しみながら活動する町内外の方を『プロジェクトオーナー』としてサポートしています。

今回の記事では、令和4年度からプロジェクトオーナーとして参加し、令和5年度も継続してプロジェクトに取り組んでいる興梠優護さんを取材しました。


プロフィール

名前:興梠優護(こうろぎ ゆうご)
出身地:山都町
居住地:熊本市
プロジェクト:
画家が描くオリジナルデザインの特産品開発

興梠優護さんは、山都町・旧蘇陽町出身のアーティスト。現在は熊本と東京を拠点としながら、画家として国内外で制作・展示を行うなど精力的に活動されています。

興梠さん
幼稚園のころから、空いてる時間があれば漫画を描いていました。当時流行っていた「ドラゴンボール」とか「スラムダンク」とか、夕飯前も怒られるまでずっと描いてましたね。中学くらいになると二次元を描き写す漫画にも飽きてきて、美術の時間に水彩とか石膏を描いてみたらそれが難しくて。「こっちは簡単に描けないのはなんでだろう?」と、どんどんはまっていきました。

物心ついたときから絵を描くことが好きだったと語る興梠さん。その熱は冷めることなく、興味の分野を漫画から水彩、油絵へと幅を広げていきました。高校は県内の美術科を選択し、東京の芸術大学へと進学。その後、画家としての道を歩み始めました。

地元と関わるきっかけをくれた「山都ラボ」

大学から熊本を離れ、これまでアートの分野で日本のみならずロンドンやベルリンなど海外でも多くを見てきた興梠さん。年を重ねていく中で、故郷・山都町に寄せる思いが芽生えていました。

興梠さん
年に数回帰る程度で、今山都町の中身がどうなっているのか分からなかったけれど、何かしら一緒にできることがあるんじゃないかなとは、ずっと思っていました。ただ、やり方もわからないし、ルートもわからなかった。ある日父から「山都ラボ」のチラシが送られて来て、こういう場があるなら、まずは関わってみようかなと思いました。

漠然と抱いていた、地元で何かしたい、貢献したいという思い。そんな時に出会ったのが、実家の父から紹介された「山都ラボ」でした。
興梠さんが令和4年度のプロジェクトとして取り組んだのは、山都町の野菜をモチーフにしたデザインの制作と、布地づくり。その布を使用して地元の方々と一緒にエプロンを制作しました。

今年のゴールデンウィークには、東京・六本木ミッドタウンのイセタンサローネにて、興梠さんの個展と併せて山都町のマルシェを開催。山都町産の野菜や、興梠さんがパッケージデザインをした商品も販売するなど、多くの方へ向けて山都町の魅力を新しい形で発信しました。

六本木・イセタンサローネにて
自身の個展に合わせて山都町の特産品を販売

山都ラボを通して得たもの。それは山都町の「人」から受けた興梠さん自身の意識の変容でした。

興梠さん
外から見る山都町は、過疎化を辿る一途のようなネガティブなイメージを抱いていたけど、その中でいろんな可能性をすくい取って、それをチャンスに変えていくような熱意のある人たちがいることを知って、山都町に対する意識がポジティブなものに変わっていきました。

そんな「人」と「思い」を直に知る中で、単発ではなく、長い期間をかけて少しずつでも何かをやっていく方がいいと考えるようになったと興梠さんは語ります。自分を起点として、山都町と面白そうな人や場所を繋げていく。時間をかけるからこそ生み出していける大きな何か。そんなビジョンも視界の片隅に見え始めました。


表面から内面へ楽しさを生み出す

興梠さんは令和5年度も引き続き山都ラボに参加し、プロジェクトを行っています。先日は通潤橋をテーマにしたTシャツとポロシャツを制作しました。他にも、農家さん向けに野菜をモチーフにしたTシャツなどの制作も予定しています。

通潤橋Tシャツをお披露目

興梠さん
山都ラボを通じて様々な方にお会いするうちに、山都町の魅力は結局やっぱり「人」だと思うようになりました。
特に農家だと若い人たちも頑張っていて勢いがある人たちもいる。一方で、自分たちの親世代がひたすら頑張る姿を見てきて「農業はきつくて辛い」というイメージも、これまで少なからずありました。でも、やりようによってはそれを変えていけるんじゃないかと思います。
こういうことを言うと、農業の大変さをお前は分かってないと、叱咤をうけるんですけれど(笑)。

このプロジェクトの大元にはそうした、もっと農業自体も楽しく、いろんな人がやりたくなるような、きっかけ作りができないかなという気持ちがあるんです。

外出するときは、作ってる野菜がプリントされたTシャツやポロシャツ、エプロンを着ていることで会話が生まれて、作っているものに誇りをもっと持てて、農業が作業・労働だけじゃなく自分の生きてるいろんな生活に広がっていくような、それを通じてファンができていくような、そんな様々な「きっかけ作り」を今考えています。

実家も農業を営んでいるという興梠さん。制作するTシャツは、農家さんの作業着としても着て欲しいといいます。農業にとってはこだわる必要のない衣服だからこそ、そこにも楽しみを持って欲しい。表面的なことこそ、その余白から生み出される内面への影響がきっとあるはず。そんな思いがあります。

さらに、興梠さんの妹・山下くるみさんも、令和5年度山都ラボのプロジェクトオーナーとして活動中。先日は、くるみさんの主催する「森林浴リトリートツアー」の中で、興梠さんの油絵ワークショップを開催しました。


油絵初体験の方も、時を忘れて熱中
子どもも大人も一緒に。右が妹のくるみさん
自由に表現するって、楽しい

こうした一つひとつの動きを起こしていく中で、それぞれの思いを持って山都町を盛り上げ、一人ひとりの暮らしを豊かに楽しくしていこう。そういった意識の繋がりの輪は、確実に広がっています。

興梠さん
活動拠点を何ヶ所か持ちたいと思っている中で、山都町を最終的な拠点の一つに入れたいなと思うようになりました。

場所を行ったり来たりする中で、いろんな人との出会いがある。そうする中で、山都町から得る発想もあれば、他から山都町にもたらされるものも自ずと出てくる。都会とは違った広い土地や自然など、山都での「当たり前」を逆手にとってできることもありそうです。
興梠さんのこれからの未知なる活動の先には、故郷・山都町が創造の可能性を大いに秘めているのかもしれません。

◇ウェブサイト Yugo Kohrogi
http://oguy.jp/index.html

◇山都ラボ ラボサポーター申し込みフォーム
https://forms.gle/6z4jXk7ZreNihGKs8


企画制作:合同会社ミミスマス
インタビュー/文/写真:中川薫

#山都ラボ

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